任意整理の返済計画は、借入先ごとの残元金や合意条件を確認したうえで、毎月の収入から生活に必要な支出を差し引き、無理なく返せる金額と期間を決めて作成します。一般には分割返済を前提にしますが、返済期間や将来利息の扱いは、借入先との交渉と合意によって決まります。
大切なのは、借金を返せる最大額ではなく、急な出費があっても継続できる金額にすることです。任意整理後の返済を滞納すると、合意内容に定められた不利益が生じる可能性があるため、収支を正確に確認してから計画を作ります。
任意整理の返済計画を作成する流れ
返済計画は、次の順番で作成します。先に返済額を決めるのではなく、借金の状況と家計を確認してから、実行可能な金額を算出します。
- 任意整理の対象にする借入先と残高を確認する
- 毎月の収入と支出を整理する
- 返済に回せる金額を計算する
- 返済期間と分割回数を検討する
- 借入先と返済条件を交渉し、合意内容を書面で確認する
- 返済開始後も家計と支払状況を管理する
1. 借入先ごとの残高と返済条件を確認する
最初に、クレジットカード会社、消費者金融、銀行などの借入先ごとに、現在の残高、毎月の返済額、滞納の有無、保証人や担保の有無を整理します。任意整理では、すべての借入を一律に扱うのではなく、対象にする借入先を選ぶことがあります。
たとえば、保証人が付いている借入を整理すると、保証人に請求が及ぶ可能性があります。また、自動車ローンを任意整理の対象にすると、車を引き上げられることがあります。住宅ローンや税金、養育費なども、通常のカードローンと同じように扱えるとは限りません。
したがって、借入先の名称だけで判断せず、契約内容と現在の残高を確認して、対象にする借入と対象外にする借入を分けます。
2. 毎月の収入と支出を整理する
次に、手取り収入と生活費を、実際の通帳や明細を見ながら整理します。家賃や食費だけでなく、年払いの費用や通院費、車の維持費、子どもの学校関連費なども含めることが重要です。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 収入 | 給与、年金、事業収入、児童手当など。毎月の手取り額と変動の有無 |
| 固定費 | 家賃、住宅ローン、通信費、保険料、教育費など |
| 変動費 | 食費、日用品、光熱費、医療費、交通費など |
| 臨時費用 | 税金、車検、更新料、冠婚葬祭、入学費用など |
| 現在の返済 | 任意整理の対象にする借入以外の返済額 |
ボーナスや臨時収入を返済の前提にすると、支給されなかったときに滞納しやすくなります。毎月の返済額は、できるだけ通常の手取り収入だけで支払える範囲に設定します。
3. 返済に回せる金額を計算する
返済に回せる金額は、毎月の手取り収入から、生活に必要な支出と返済以外の支払いを差し引いて計算します。
返済に回せる金額 = 手取り収入 − 生活費 − 返済以外の支払い − 予備費
ここでいう予備費は、病気や家電の故障など、毎月は発生しない支出に備えるためのお金です。計算上の余りをすべて返済に回すと、急な出費で再び借入をすることになりかねません。
たとえば、これは実際の家計を示すものではなく、計算方法を説明するための仮定例です。
- 手取り収入:25万円
- 生活費と固定費:19万円
- 返済以外の支払い:1万円
- 予備費:2万円
この場合の計算は「25万円 − 19万円 − 1万円 − 2万円 = 3万円」です。したがって、返済額の上限を3万円と考えるのではなく、収入の変動や支出の増加も考慮して、さらに余裕のある金額を検討します。
返済期間と分割回数はどう決めるか
任意整理では、残元金を分割して返済する計画を立てることが一般的です。ただし、返済期間や分割回数に一律の決まりがあるわけではなく、借入先、取引期間、滞納状況、本人の収入などによって異なります。
計算上は、次の式で毎月の返済額を見積もれます。
毎月の返済額の目安 = 返済する元金の合計 ÷ 分割回数
仮に、返済する元金が120万円で、60回払いにできるとすると、計算上の月額は「120万円 ÷ 60回 = 2万円」です。ただし、実際の返済額には、合意後の利息や遅延損害金、事務手数料などが関係する場合があります。この計算だけで実際の支払総額を確定することはできません。
また、返済期間を長くすれば毎月の負担は下がりますが、返済が終わるまでの期間は長くなります。短期間で返す計画は早く完済できる一方、毎月の負担が大きくなります。重要なのは、最も短い期間ではなく、収入や生活状況に照らして最後まで続けられる期間を選ぶことです。
返済計画を作るときに確認する条件
返済額だけでなく、次の条件を確認してから合意します。
- 返済する元金はいくらか
- 将来発生する利息が免除または減額されるか
- 遅延損害金が含まれるか、免除されるか
- 毎月の支払額はいくらか
- 支払日は毎月何日か
- 返済期間と支払回数は何回か
- 振込手数料を誰が負担するか
- ボーナス払いなど、毎月払い以外の条件があるか
- 返済が遅れた場合の扱いはどうなるか
「月々いくら」という説明だけでは、総額や支払回数が分からないことがあります。合意書などで、借入先ごとの返済額、支払日、回数、支払総額を確認しておきましょう。
任意整理の返済計画に含める費用に注意する
任意整理の返済計画で計算する借金の返済額と、弁護士や司法書士に依頼した場合の費用は、別に発生することがあります。依頼費用の支払い方法や支払時期は、事務所によって異なるため、契約前に確認が必要です。
たとえば、借入先への返済が始まる前に依頼費用を分割で支払う場合もあれば、借入先への返済と並行して支払う場合もあります。借入先への返済額だけを見て「毎月支払える」と判断すると、依頼費用を含めた実際の負担を見誤る可能性があります。
返済計画を作るときは、次の2つを分けて一覧にします。
| 区分 | 確認する内容 |
|---|---|
| 借入先への返済 | 借入先ごとの月額、支払回数、支払日、総額 |
| 手続きにかかる費用 | 着手金、報酬、実費、分割払いの月額や回数など |
返済計画を無理なくするための判断基準
返済額を決めるときは、現在の家計だけでなく、返済中に起こり得る変化も考えます。たとえば、更新時期が近い賃貸住宅、車検、子どもの進学、転職や退職の予定がある場合は、その費用を計画に含めます。
次のような状態なら、返済額を下げられないか、返済期間を見直せないか検討が必要です。
- 返済すると生活費が不足する
- 毎月の収入が大きく変動する
- 医療費や教育費などの支出が増える予定がある
- 貯金がなく、急な出費に対応できない
- 返済のために新たな借入やクレジットカードの利用が必要になる
- 現在の返済をすでに滞納している
任意整理後は、原則として新たな借入に頼らず返済を続けることが求められます。返済を優先するあまり、家賃、税金、医療費、食費などを削りすぎる計画は、継続できる計画とはいえません。
返済計画を作成できない場合の考え方
収入から必要な生活費を差し引くと返済に回せるお金がほとんどない場合や、任意整理後の返済額を継続して支払える見込みがない場合は、任意整理が適した手続きとは限りません。
任意整理は、借入先との合意が必要な手続きです。返済できる金額や期間を一方的に決められるわけではありません。任意整理で返済計画を作れるかは、借入総額だけでなく、安定収入、生活費、他の債務、滞納の状況などを合わせて判断します。
返済計画を作る段階で支払いの見通しが立たない場合は、任意整理だけを前提にせず、個人再生や自己破産など、ほかの債務整理手続きとの違いも含めて確認する必要があります。
返済開始後に計画を守るための管理方法
合意後は、支払日と返済額を口座やカレンダーに登録し、毎月の返済分を先に確保します。借入先が複数ある場合は、借入先ごとの支払日と振込先を一覧にすると、振込先の間違いや支払い忘れを防ぎやすくなります。
- 毎月の収入が入ったら、返済に必要な金額を確保する
- 借入先ごとの支払日までに振り込む
- 通帳や振込明細で支払い完了を確認する
- 収入減少や大きな支出が分かった時点で、早めに依頼先や借入先へ連絡する
返済が難しくなったときに、連絡せず支払いを止めるのは避けてください。合意書の内容や契約関係によって対応が異なるため、遅れる前に、手続きを依頼した専門家や借入先へ相談します。
任意整理の返済計画を作るときの要点
任意整理の返済計画は、借入先ごとの返済条件を確認し、収入から生活費と予備費を差し引いたうえで、継続できる月額と期間を決めることで作成します。
まずは通帳や給与明細、請求書を用意し、借入残高と毎月の家計を一覧にしてください。そのうえで、依頼費用を含めた実際の月額、支払回数、返済が遅れた場合の扱いまで確認し、最後まで支払える計画かを判断します。







